「最近、便秘や下痢を繰り返すことが多い…」 「大腸がん予防って、食物繊維を食べればいいだけじゃないの?」

近年、日本人の部位別がん罹患数(かかる人の数)で常に上位に入る「大腸がん」。

生活習慣や遺伝だけが原因と思われがちですが、実は「腸内細菌(腸内環境)」が大腸がんの発症や進行に深く関わっていることが、近年の研究で次々と明らかになってきました。

「胃がんといえばピロリ菌」という知識は広く知られていますが、大腸がんにも同じように特定のアプローチができる時代がすぐそこまで来ています。

この記事では、大腸がんと腸内環境の切っても切れない関係や、世界・日本で発表された最新の研究トピック、そして今日からできる「がんを寄せ付けない腸活アプローチ」を徹底解説します!

なぜ「腸内環境」が大腸がんのリスクを高めるのか?

人間の腸内には、およそ100兆個以上もの腸内細菌が生息しています。

これらは「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(ひよりみきん)」の3つに大きく分類され、絶妙なバランスを保ちながら「腸内環境(腸内フローラ)」を形成しています。

健康な状態であれば、善玉菌が優勢となり、腸粘膜のバリア機能を高めたり、免疫細胞を活性化させたりして身体を守ってくれます。しかし、食生活の乱れやストレス、加齢などによって悪玉菌が増殖すると「ディスバイオーシス(腸内細菌叢の乱れ)」と呼ばれる状態に陥ります。

悪玉菌が増えすぎると、以下のようなプロセスで大腸がんのリスクが高まると考えられています。

  • 有害物質・毒素の産生: 悪玉菌がタンパク質や脂質を分解する際に、致死的な毒素や二次胆汁酸などの有害物質を発生させる。
  • 慢性的な腸粘膜の炎症: 有害物質に晒され続けた腸粘膜が慢性炎症を起こし、細胞の遺伝子(DNA)が傷つきやすくなる。
  • 遺伝子変異の蓄積: 傷ついた細胞が修復されないまま異常増殖を繰り返し、最終的に「がん化」する。

つまり、腸内環境が悪化することは、お腹の中に「がんの芽」が育ちやすい土壌を作ってしまうことと同義なのです。

【最新トピック】大腸がんと腸内細菌の驚くべき関係

近年、がんゲノム解析やマイクロバイオーム(微生物叢)研究の飛躍的な進歩により、大腸がんと特定の細菌に関する重要な発見が相次いでいます。

① 日本人の大腸がんの「約半数」に腸内細菌の毒素が関係?

特に注目を集めているのが、特定の大腸菌などが放出する「コリバクチン」という毒素です。

「コリバクチン(Colibactin)」とは、主に私たちの腸内に棲んでいる「大腸菌(Escherichia coli)」の一種が作り出す毒素(遺伝毒性物質)です。

すべての病原性・悪玉細菌や大腸菌が持っているわけではなく、特定の大腸菌が持っている「遺伝子のセット」によって産生されます。

(ただし「特定の大腸菌がいる=即がんになる」というわけではありません。腸内環境が整っていて善玉菌が優勢な状態であれば、この菌が増殖しすぎたり毒素を過剰に出したりするのを抑え込むことができます。)

大阪大学や東京大学などの研究チームや国立がん研究センターなどの国際共同研究により、日本人の大腸がん患者の約半数から、この毒素(コリバクチン)によって特徴的なDNA変異が生じた痕跡が見つかりました。

驚くべきことに、若年性の大腸がん(40歳未満での発症)においては、約7割の患者からこの変異が確認されています。

ピロリ菌を除菌することで胃がんのリスクを大幅に下げられるようになったのと同様に、将来的には「大腸がんを起こす特定の毒素菌を除菌・制御することで予防する」という新しい医療アプローチが期待されています。

② 歯周病菌(フソバクテリウム)が大腸まで届いて悪さをする?

もうひとつ、世界中で研究が進んでいるのが「フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)」という細菌です。

この菌は、本来は人間の「口の中」に存在する歯周病の原因菌のひとつです。

しかし近年の研究で、唾液などを経由して腸内に到達したフソバクテリウムが、大腸がんの組織に多く付着していることが判明しました。

さらに、この菌が多く存在する患者は、がんの進行が早かったり、再発リスクが高かったりすることも分かってきています。

細胞の「ブレーキ」役を効かなくさせて、がん細胞の増殖の「アクセル」を踏み続けてしまうからです。

「口の健康(オーラルケア)」を保つことが、めぐりめぐって「大腸がんの予防」につながるという事実は、現代人にとって非常に重要な最新トピックのようです。

大腸がんのリスクを高める「注意すべき生活習慣」

腸内の「悪玉菌」や「毒素を発生させる菌」を増やしてしまう原因の多くは、日々の生活習慣に潜んでいます。

  • 赤身肉や加工肉の過剰摂取 牛・豚・羊などの赤身肉や、ハム・ソーセージといった加工肉の摂り過ぎは、腸内で「二次胆汁酸」や悪玉菌の産生を促します。
  • 高脂質・低食物繊維の食事(欧米型の食事) 脂っこい食事ばかりで野菜や穀物が不足すると、善玉菌のエサが減り、腸内細菌の多様性(バリエーション)が失われます。
  • 過度の飲酒と喫煙 アルコールの分解過程で生じるアセトアルデヒドは粘膜を傷つけ、タバコに含まれる有害物質は腸内環境の均衡を激しく乱します。
  • 運動不足と肥満 腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下して便秘になりやすくなり、便が大腸内に長期間留まることで有害物質が粘膜に接触する時間が長くなります。

今日からできる!大腸がんを予防するための「腸活」5選

それでは、腸内環境を整えて大腸がんのリスクを下げるためには、日常でどのようなケアを行えばよいのでしょうか?

今日から実践できる5つの習慣をご紹介します。

① 食物繊維を「両方」バランスよく摂る

腸内の善玉菌(ビフィズス菌や酪酸菌など)を育てる一番のエサは「食物繊維」です。

食物繊維には2種類あり、両方をバランスよく摂ることが重要です。

  • 水溶性食物繊維: 善玉菌のエサになり、腸内を弱酸性に保つ「短鎖脂肪酸」を作り出します。(例:わかめ・昆布などの海藻類、オクラ、ナメコ、大麦、アボカドなど)
  • 不溶性食物繊維: 便のかさを増やして腸を刺激し、排便を促します。(例:ごぼう、きのこ類、豆類、芋類など)

② 発酵食品で「善玉菌そのもの」を補う

納豆、キムチ、味噌、ヨーグルト、ぬか漬けなどの発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌などの生きた善玉菌が豊富に含まれています。

複数の発酵食品を日替わりで取り入れると、腸内細菌の「多様性」が高まります。

③ 育菌の要!「短鎖脂肪酸」を増やす工夫をする

近年の腸活キーワードである「短鎖脂肪酸」。

短鎖脂肪酸は腸内細菌が食物繊維などを分解・発酵するときに作る成分で、酢酸や酪酸、プロピオン酸が90~95%を占め、腸を守り、免疫や代謝を高める働きをしています。

ほかにも吉草酸やカプロン酸(ヘキサン酸)など様々な種類があり、これらも同様にお腹の粘膜を守ったり、悪玉菌を抑えたりする多角的な働きをしています

短鎖脂肪酸を体内で効率よく増やすためには、「水溶性食物繊維」と「発酵食品」を組み合わせて食べることが最も効果的です。

④ 「毎日の丁寧な歯磨き」で口内環境を整える

最新研究でも触れた通り、歯周病菌が大腸へ移行するのを防ぐためには、毎日のオーラルケアが不可欠です。

毎日の丁寧なブラッシングはもちろん、デンタルフロスや歯間ブラシを使い、定期的に歯科医院で歯石除去やクリーニングを受けることもおススメです。

⑤ 適切な「大腸がん検診(便潜血検査)」を定期受診する

腸内環境を整えることは非常に強力な予防策ですが、100%がんを防げるわけではありません。

大腸がんは早期発見できれば非常に治りやすいがんです。

40歳を過ぎたら、自治体や企業の健康診断で実施されている「便潜血検査(検便)」を毎年必ず受けましょう。

陽性反応が出た場合は放置せず、必ず大腸内視鏡(カメラ)検査を受けてください。

まとめ:お腹の「菌」を味方につけて、健やかな未来を守ろう

かつては「遺伝や運」の要素も大きいと考えられていた大腸がんですが、科学の進歩により「腸内環境を整え、特定の悪玉菌の増殖を防ぐことが、がん予防に大きく寄与する」という時代へ変わりつつあります。

  • 日本人の大腸がんの約半数には腸内細菌の毒素が関連している ことがわかってきている。
  • 歯周病菌(フソバクテリウム)などのお口の菌が腸に届いて悪さをする可能性がある。
  • 食物繊維・発酵食品・オーラルケアで「腸内環境」を育てる習慣が大切である。

毎日の食事やオーラルケアといった小さな習慣の積み重ねが、あなたのお腹の腸内細菌を「心強い味方」に変えてくれます。

ぜひ今日のご飯から、食物繊維や発酵食品をプラスして、お腹に優しい「がん予防」を始めてみませんか?

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