以前の「肌活」のブログでお肌にはたくさんの細菌が存在していて、それが良いバランスが保たれている時にはお肌を健やかに保つため、とても大切な役割をしていることを書きました。
本日のブログでは、今から30年以上前の私の実体験をまじえ、お肌の細菌叢と腸の細菌叢との関係を深堀していきます。
このブログが今、肌荒れやアトピー性皮膚炎などの肌トラブルを抱えておられる方の参考になれば嬉しいです。

お肌と腸は裏返し
昔から「お肌と腸は裏返し」と言う言葉があるように、肌と腸は密接な関係があると考えられています。
発生学的な裏返し(構造の類似性)
人間の発生の過程では、皮膚も腸も、もともと「外胚葉」という同じ組織から派生した部分が体の内側に入り込んで形成されます。このため、皮膚と腸の粘膜(内壁)は、構造や機能に驚くほど多くの類似点を持っています。
- バリア機能: どちらも体と外界(または消化管内)を隔てる「バリア(障壁)」としての役割を持っています。
- 皮膚:外部の乾燥や病原体から身体を守る。
- 腸:消化管内の有害物質や病原体が体内に侵入するのを防ぐ。
- 常在菌叢(マイクロバイオーム): どちらも、善玉菌、悪玉菌などが共存する膨大な数の細菌群(細菌叢)が存在し、健康の維持に不可欠です。
密接に関わる肌の細菌叢と腸内細菌叢
肌の健康、美容の分野で今最も注目されているテーマの一つが、この「肌の細菌叢(スキンマイクロバイオーム)と腸内細菌叢(ガットマイクロバイオーム)の関係」です。
この二つの間には密接で、しかも双方向の相互作用があり、これは専門用語で「腸皮膚相関(Gut-Skin Axis)」と呼ばれ、最新の美容・医療研究において非常に重要視されています。
🧐 腸皮膚相関(Gut-Skin Axis)の最新メカニズム
腸と皮膚は、単に繋がっているのではなく、お互いの状態を常に伝え合っている「通信ネットワーク」のようなものだと考えられています。
1. ➡️ 腸から皮膚への影響(主な経路)
「腸内細菌叢のバランスが乱れるとその影響が血液を介して全身、そして皮膚へと伝わる」という現象は、最新の医学・美容分野で研究が進んでいる「腸皮膚相関(Gut-Skin Axis)」の基本的なメカニズムの一つです。
特に、腸内環境の乱れが血液を介して皮膚に影響を与えるプロセスは、主に以下の2つの経路で起こります。
1. 🩸 炎症性物質の輸送による経路(悪影響)
腸内環境が悪化すると、有害な物質が血液中に漏れ出し、炎症を引き起こします。
- 腸管バリアの低下(リーキーガット):
- ストレス、偏った食事、抗生物質の乱用などにより、腸の粘膜細胞同士の結合(タイトジャンクション)が緩み、腸管のバリア機能が低下します。
- LPS(リポ多糖)などの侵入:
- 腸内にいる一部の悪玉菌の細胞壁に含まれる毒素であるLPS(リポ多糖)などが、緩んだ腸管バリアをすり抜けて血液中に吸収されます。
- 全身の慢性炎症:
- 血液に乗って全身を巡り始めたLPSなどは、免疫細胞を刺激し、全身性の微弱な慢性炎症を引き起こします。皮膚に到達すると、ニキビ、アトピー性皮膚炎、乾癬などの炎症性皮膚疾患を悪化させる一因となります。
2. ✨ 代謝産物の輸送による経路(良い影響)
逆に、腸内細菌叢のバランスが良い場合は、有益な成分が血液を介して全身に運ばれ、皮膚に良い影響を与えます。
- 短鎖脂肪酸の産生:
- 腸内の善玉菌が、食物繊維やオリゴ糖を発酵・分解することで、短鎖脂肪酸(特に酪酸、酢酸、プロピオン酸)などの有益な物質を産生します。
- 全身性の抗炎症作用と栄養補給:
- この短鎖脂肪酸は、大部分が腸のエネルギー源となりますが、一部は血液中に吸収され、全身を巡ります。
- 皮膚に到達した短鎖脂肪酸は、抗炎症作用を発揮して皮膚炎を鎮めたり、皮膚のバリア機能や水分保持能力の改善に貢献したりすると考えられています。
このように、腸内環境が乱れると「炎症物質」が、整っていると「有益な代謝産物」が血液を介して全身に運ばれ、結果として皮膚の状態に大きな影響を与えることが、数多くの研究で裏付けられています。
| メカニズム | 詳細 | 肌への影響(疾患例) |
| 腸管バリア機能の低下(リーキーガット) | 食生活の乱れやストレスなどで腸内細菌のバランスが崩れると、腸の粘膜バリアが弱まります。 | |
| 炎症物質の全身拡散 | 弱ったバリア(リーキーガット)から、腸内に存在するLPS(リポ多糖)などの炎症物質が血液中に漏れ出します。 | ざ瘡(ニキビ)、乾癬、アトピー性皮膚炎の悪化 |
| 代謝産物(短鎖脂肪酸)を介した作用 | 腸内細菌が食物繊維などを発酵して作る短鎖脂肪酸(酪酸など)は、血液に乗って皮膚に到達し、抗炎症作用を発揮したり、皮膚の水分量やバリア機能を改善する可能性があります。 | 肌のバリア機能改善、抗光老化効果(シミの抑制) |
2. ⬅️ 皮膚から腸への影響(最新の知見)
最近の研究では、この関係が「双方向性」であることが示唆されています。つまり、皮膚の炎症が腸内環境に影響を与えるケースも報告されています。
- 皮膚の炎症が腸の免疫細胞を変容: 乾癬などの重度の皮膚炎症が起こると、それがシグナルとなって大腸の免疫細胞の構成や機能を変え、腸の炎症(腸炎)を悪化させやすい環境が作られることが動物実験で明らかになっています。(慶應義塾大学などによる研究)
- 実際に、乾癬患者は、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBD)を発症するリスクが健常人よりも高いことが疫学的に知られています。
皮膚の炎症によって生じた全身性の免疫の変化や、特定の生理活性物質の変動が、間接的に腸内細菌叢の構成(バランス)そのものを変化させることも示唆されています。
この変化した細菌叢が、さらに腸の炎症を助長するという悪循環(ポジティブフィードバックループ)が起こる可能性が指摘されています。
最新の科学によって裏付けられている「双方向の相関」
「お肌と腸は裏返し」という古来の知恵は、以下のような「双方向の相関」として、最新の科学によって裏付けられていると言えます。
| 経路 | 内容 |
| 腸 → 皮膚 | 腸内環境の乱れ(LPSなど)が血流に乗って皮膚の炎症を引き起こす。 |
| 皮膚 → 腸 | 皮膚の強い炎症(乾癬など)が全身の免疫システムを介して腸の炎症を引き起こしやすい環境を作る。 |
この双方向の関係は、皮膚疾患やアレルギーの治療において、皮膚のケアだけ、あるいは腸のケアだけでは不十分であり、両方を同時にアプローチする「トータルケア」がとても重要になることを意味しています。
💡 腸皮膚相関を改善するために具体的にできること
1. 🍽️ 内側からのアプローチ(最重要:腸活)
腸内環境を整えることは、全身の慢性炎症を抑え、肌の土台作りになります。
① 食事の改善(シンバイオティクスを意識)
腸内細菌のバランスを善玉菌優位にするため、以下の食材を意識して摂りましょう。
- プロバイオティクス(善玉菌を摂取):
- ヨーグルト、納豆、味噌、ぬか漬け、キムチなどの発酵食品。
- (ワンポイント)夜7時~8時頃にプロバイオティクスを摂ると、睡眠中の腸のゴールデンタイムに合わせやすいという説もあります。
- プレバイオティクス(善玉菌のエサ):
- 食物繊維(水溶性・不溶性をバランス良く)。海藻類(わかめ、めかぶ)、きのこ類、根菜類(ごぼう)、果物(バナナ、キウイ、りんご)、オートミール、大麦など。
- オリゴ糖(はちみつ、玉ねぎ、バナナなど)。
- 👉 水溶性1:不溶性2のバランスが理想的です。
- 乳酸菌製剤:食生活を整えることは基本ですが乳酸菌製剤を摂られるのも一案です。腸内環境を効率的に整える一助になります。
- 控えるべきもの: 加工食品、高脂肪食(揚げ物など)、過剰なアルコールやタバコは腸内環境を乱す大きな要因です。
② 睡眠とリズムの確保
腸の働きは体内時計(自律神経)の影響を強く受けます。
- 質の良い睡眠: 腸で作られるセロトニンから睡眠ホルモン(メラトニン)が生成されるため、腸と睡眠は密接です。7〜8時間の睡眠を確保しましょう。
- 規則正しい食事時間: 毎日決まった時間に食事を摂り、特に朝食は腸の蠕動運動のスイッチを入れるため重要です。
- 消化のお掃除タイム(MMC)の確保: 就寝の3時間前までに夕食を済ませることで、夜間の腸のお掃除(MMC: 伝播性収縮運動)を妨げないようにしましょう。
③ ストレスと自律神経の調整
ストレスは腸の動きを鈍らせ、腸内フローラのバランスを乱します。
- アロマテラピー、瞑想、腹式呼吸、自然との触れ合いなどで意識的にリラックスタイム(副交感神経優位)を作り、ストレスを発散させましょう。
2. 🧪 外側からのアプローチ(肌活)
内側のケアと並行して、皮膚のバリア機能を守り、皮膚の炎症シグナルが腸へ悪影響を及ぼすのを防ぎます。
① 皮膚のバリア機能の徹底的な保護
- 自分に合った保湿剤などの利用: 自分に合った製品を使用して皮膚バリア強化の補佐をします。
- 過度な洗浄の回避: 刺激の強い洗顔料や洗浄力の強いボディソープで洗いすぎると、皮膚の常在菌(スキンマイクロバイオーム)やバリア機能に必要な皮脂まで失われてしまいます。
②炎症への適切な対応
- 皮膚に炎症がある場合は、自己判断せず、専門家に相談しましょう。皮膚の炎症が長引くことが、腸への悪影響につながる可能性があります。
以下のブログは以前に「肌活」について書いたものです。こちらもぜひご覧になってください。
「腸皮膚相関」へのアプローチは、食事・睡眠・ストレス・スキンケアの全てをトータルで整えることが重要になります。
私の長男の実体験
ここからは今から35年弱前の私の長男の実体験をお話していきます。以前にも書いたことがありますのでご存知の方は飛ばしてくださいね。
私の長男は生後1月もしない頃から顔~全身にかけ、とてもひどいアトピー性皮膚炎になってしまいました。
当時はアトピー性皮膚炎という病気や名前もまだそれほどポピュラーではなく、抱っこしている長男を覗き込んだ人が「ギョッ!」息を飲むのがわかるくらい酷い有様でした。
ひどい痒さのために夜も眠れず、掻きむしり防止にしていた綿のミトンも、湿疹から出る汁で一晩でまっ黄色になるくらいで、今、思い出してもつらく悲しい思い出です。
それゆえ、少しでも良い情報を。と、ドクターショッピングと薬局ショッピングを重ねたり、友人たちからも情報をもらったりしながら、家族で症状の増減に一喜一憂しながら子育ての毎日を送っていたことを思い出します。
そんな長男が1歳9カ月くらいのある日、突然ひどい下痢と高熱に襲われ即入院となってしまいました。腸炎でした。
24時間点滴を受け、意識朦朧とベッドに横たわること数週間。この間、もちろん飲まず食わずで、熱は上がったり下がったりしましたが、ひどい下痢はずっと続いていました。
幸いにも40日ほどで体調を取り戻し、無事に退院することができたのですが、この入院生活のあと、なんと!!長男のアトピー性皮膚炎はすっかり治ってしまったのです。
つまり、腸炎の入院期間中に意図ぜず腸内環境の大掃除と大革命が出来てしまった・・・・というようなことでしょうか。
今では前述通り、腸と肌の関連性、腸内環境の重要性は証明されていますが、まだまだ当時は一部でしか言われていなかった腸とアレルギーや肌との関係を思い知った出来事でした。
「本当に腸と肌は裏表なんだ・・・」
1歳9か月の子の腸内環境がそれほど悪かったのは、生まれた時からすでに悪く、それはつまり、お腹にいた時から生まれて1歳9か月に至るまでの、母親である私の生活や食事習慣がそうしてしまっていたのであろうと、今では理解できますが、当時はそのようなことにはゆめゆめ思い至りませんでした。
有難いことに長男のアトピー性皮膚炎はそれ以来再発することはなく、肌は決して綺麗とは言えませんが小康状態を保っています。これは彼なりに腸内環境がそこそこ整うような生活や食事習慣をしているからだと思われます。(知らんけど(;^_^A💦)
腸の健康は全身の健康!は本当!!
以前のブログでは小腸、大腸と乳酸菌との関係、免疫力との関係などを詳しく書いています。
よろしければこちらもご覧になってください。
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