今年も暑い夏が過ぎ、短くなってしまった秋を経て、段々と気温が下がり、寒い冬がやってきました。
みな様は冬はお好きですか?
冷え性の方にとってはとりわけ辛い季節になりますね。
本日のブログではこれからますます寒くなってくるこの冬を健康に過ごしていただくために、東洋医学で冬の臓器と言われる「腎」にスポットライトを当てて養生法をお伝えしていきます。
本日のブログが冬が苦手!健康に冬を乗り切りたい!と思っておられる方の参考になると嬉しいです。

目次
「腎」は体の「エネルギー保管庫」
東洋医学でいう「腎」は、西洋医学の腎臓の機能(おしっこを作ったり、血圧を調整したり、他)だけでなく、生命力の源となるエネルギー(精:せい)を蓄えたり、成長・発育、生殖、水分代謝、老化など、幅広い役割を担う大切な臓器と考えられています。
1. 精(せい)を蔵す(精の貯蔵と管理)
- 「精(せい)」とは、人間が生き、成長し、子孫を残すための根本的なエネルギー物質です。
- 先天の精: 親から受け継いだ、生まれながら持っている生命の根源的なエネルギー。有限であり、使いすぎると老化につながります。
- 後天の精: 飲食物から作り出され、腎に貯蔵されるエネルギー。先天の精を補い、生命活動を支えます。
- 腎は、この「精」を蓄え、体の成長・発育、生殖機能、そして老化のプロセス全体を司ります。
2. 水(すい)を主る(水分代謝の管理)
- 体内の水液のバランスを調整し、尿の生成と排泄をコントロールします。
- 腎の機能が低下すると、尿のトラブル(頻尿、夜間尿、尿漏れ、むくみ)が起こりやすくなります。
3. 骨を主り、髄(ずい)を生ず(骨・脳との関係)
- 腎に蓄えられた「精」は、髄(骨髄や脳髄)を生み出す元になるとされます。
- 骨・歯・脳の健康と深く関わっており、腎が弱ると骨粗しょう症、歯のぐらつき、記憶力や集中力の低下(脳の不調)などの老化現象が進みやすくなります。
4. 納気(のうき)を主る(呼吸との関係)
- 呼吸を司るのは「肺」ですが、吸い込んだ「気(き)」を体内に深く取り込み、貯蔵する働きを腎が担っています。
- 腎の納気作用が弱ると、息切れや浅い呼吸、特に息を吸い込むときに苦しいといった症状が出やすくなります。
5. 開竅(かいきょう)は耳と二陰(外部との窓口)
- 腎の不調は、特に以下の部位に症状として現れやすいとされています。
- 耳: 耳鳴り、難聴など。
- 二陰: 尿道を含む生殖器系と肛門。排尿・排便のコントロール異常(失禁など)に関係します。
6. 腎の華(はな)は髪(毛髪との関係)
- 髪の毛は、血(けつ)の余りであると同時に、その根本的な栄養と活力は腎の精に由来するとされます。
- 腎が弱ると、白髪、抜け毛、髪のパサつきなどの症状が現れやすくなります。
🩸 腎が弱った状態:「腎虚(じんきょ)」
これらの機能が低下した状態を「腎虚(じんきょ)」と呼びます。腎虚は、主に加齢、過労、睡眠不足、冷えなどによって引き起こされ、様々な老化現象や慢性的な不調として現れます。
| 分類 | 主な症状の例 |
| 生殖・発育系 | 性機能の低下(ED、不妊)、成長不良、早老現象 |
| 骨・歯・髪 | 腰痛、膝のだるさ、骨粗しょう症、抜け毛、白髪 |
| 水分代謝系 | 頻尿、夜間尿、尿漏れ、むくみ(特に下半身) |
| 感覚・精神系 | 耳鳴り、難聴、恐がりになる、不安感 |
| 全身 | 極度の疲れやすさ(倦怠感)、冷え、根気がない |
❄️ 腎と冬の関係
自然界のものを木・火・土・金・水に分類する、古代中国の考え方である五行説(ごぎょうせつ)によると、先ほどまで述べてきた腎は「水」に属し、季節は「冬」に対応しています。また、腎は「寒(寒さ)」を嫌う性質があります。
1. 腎は寒さに弱い
- 冬の寒さは腎にダメージを与えやすいとされています。腎が冷えると、体内の水液も冷えてしまい、様々な不調(冷え、むくみ、腰や膝の不調など)につながります。
- 特に冬は、生命力を内に集め、春に備える季節です。この時期に腎をしっかり養い、エネルギー(精)を蓄えることが、一年を元気に過ごすための鍵となります。
2. 腎の不調と関連する症状
腎の働きが弱まると、冬に悪化しやすい、または現れやすいとされる症状は以下の通りです。
- 冷え、寒がり、低体温
- 腰や膝のだるさ・痛み、骨や関節のトラブル
- 頻尿、尿漏れ、むくみ(水分の調整機能の低下)
- 抜け毛、白髪、髪のパサつき
- 耳鳴り、難聴(腎は「耳」に開竅:かいきょうするとされる)
- 性欲・生殖機能の低下
- 老化現象の加速
つまり、上記のような症状が気になる方は腎の働きが弱まっていることが考えられ、冬の季節に養生をして過ごさなければ、ますます症状は悪化していくことも考えられます。
🍲 冬の「腎」を養うための養生法
冬は腎をいたわり、エネルギーを温存・補給する養生が大切です。
1. 食材で補う(補腎)
- 黒い食材: 腎の色は「黒」とされ、黒い食材は腎を補うとされます。
- 例: 黒豆、黒ごま、黒きくらげ、海藻類(昆布、ひじき、わかめ)
- 体を温める食材(温腎陽): 冷えやすい腎を温めます。
- 例: 羊肉(ラム肉)、エビ、クルミ、ニラ、シナモン(肉桂)、生姜
- 根菜類: 冬の間に根に養分を蓄えた野菜も腎の機能を高めるとされます。
- 例: 山芋(長芋、自然薯)、レンコン、ごぼう
2. 生活習慣で養う
- 温かく過ごす: 腎は寒さが苦手なため、体を冷やさないことが最重要です。
- 特に足腰、お腹、首など、腎に関わる部位やツボがある部位を温灸などでしっかり温めましょう。日常生活でも4つの首(首・手首・足首・お腹(のくびれ))を腹巻やレッグウォーマーなどで保温しましょう。
- お風呂にゆっくり浸かり、体の芯から温めるのも効果的です。
- 十分な休養と睡眠: エネルギーを使いすぎないことが大切です。
- 早寝遅起きを心がけ、活動を抑えて静かに過ごし、睡眠をしっかりとって腎を休ませましょう。夜更かしは腎に負担をかけます。
- 穏やかな運動: 激しい運動は陽気を発散しすぎるため、ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど、穏やかな運動で体を温めるのがおすすめです。
冬は「閉蔵」の季節!!
冬は「閉蔵」の季節です。「閉蔵」とは文字通り、「閉ざして(閉)」「貯蔵する(蔵)」という意味を持ちます。
1. 自然界の現象
- 万物が閉じる: 冬になると、川の水は凍り、大地は固く凍結します。草木は枯れ落ち、動物は冬眠するなど、生命のエネルギー(陽気)を外に出さずに内側に閉じ込めます。
- 活動の停止と貯蓄: 夏や秋に実った穀物を倉(蔵)にしまい込み、活動を停止してエネルギーを節約し、次の春に向けて力を蓄える時期です。
2. それに伴う人体の生理
- 生命力の貯蓄: 人間も自然の一部であり、冬は生命力の源である「精(せい)」や「陽気(ようき)」を体内の奥深く、「腎(じん)」にしっかりと貯蔵し、漏れ出ないように閉じることが大切です。
- 消耗の防止: 春夏に消費したエネルギーを回復させ、寒さから身を守り、陽気を外に発散しすぎることを避ける「静養モード」に入ります。
🌬️ 閉蔵の季節の具体的な養生
この「閉蔵」の考え方に基づき、前述の通り冬は特にエネルギーを使いすぎないことが養生の基本とされます。
| 養生項目 | 具体的な行動 | 理由(閉蔵) |
| 休息 | 夜は早く寝て、朝はゆっくりと起きる(日の出を待って活動を始める)。 | エネルギー(陽気)の消耗を最小限に抑え、腎を休ませる。 |
| 精神 | 欲望や感情を表に出さず、穏やかに、静かに過ごす。 | 心身ともに活発になりすぎず、内側の気を乱さないようにする。 |
| 運動 | 激しすぎる運動を避け、汗をかきすぎないようにする。 | 汗とともに陽気が発散され、貯蔵すべき腎のエネルギーを消耗してしまうため。 |
| 保温 | 腹巻やマフラーなどで、体を冷やさない工夫をする。 | 寒さは腎を傷つけるため、陽気を守り、冷えを防ぐことが最優先。 |
年末年始もほどほどに
冬を健康に乗り切るための鍵は、東洋医学で生命力の源とされる臓器「腎(じん)」を大切にすることが重要であると述べてきました。
そして腎は寒さ・冷えが苦手です。
これから年末にかけてクリスマス会や忘年会など楽しいイベントが目白押しの方、また、1年の締めくくりに仕事が忙しい方、それぞれだと思いますが、一にも二にも体を冷やさない事、そして楽しさの中にも疲れを溜めないことが、2025年から2026年にかけてを健康に過ごす秘訣ということになります。
こきあ相談薬店では、上記のような養生に加え、慌ただしい中にもゆっくりとした時間を取っていただくために、体を芯から温めることが出来る温灸や、腎を養うための漢方薬や漢方食品をご提案しています。
冬の間に腎のエネルギー(精)をしっかり養うことで、春に活動を始めるための土台が作られます。寒い冬を乗り越え、来たる春を元気に迎えるため、今日から「腎」をいたわる養生を始めてみませんか。
根本から治していくために
こきあ相談薬店ではお越しいただいた際に、お客様の生活スタイルや食事の摂り方などを詳しくお聞きし、それぞれお一人お一人に適した漢方薬、漢方食品、サプリメントなどをご提案すると同時に、その方に合った生活や食事の養生法をお伝えしています。
体調というものは一度正のスパイラルに入ると、どんどん良くなっていくものです。今現在、負のスパイラルに陥っているものを、正のスパイラルにもっていくことをサポートするのが我々がおすすめする物とアドバイスである思っていただければよいです。
これらを決め、始められるのはあくまでもお客様ご本人です。こきあ相談薬店が出来ることはそれを後方支援することです。
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このブログはこきあ相談薬店の薬剤師 芳田がお届けしました。最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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