こきあ相談薬店に相談に来られるお客様の様々な不調をお伺いすると、健康診断で貧血に関する数値が正常値であっても、隠れ貧血の可能性の方がおられます。不調を訴えられる方の中には、むしろ隠れ貧血の人の方が多い印象があります。

我々がよくお客様に見せていただく健康診断の血液検査では赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)のような項目が一般的で、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)の項目がチラホラある時があります。

しかし、貯蔵鉄がわかる、血清フェリチン値の項目があることはほぼ皆無です。

そのため検査結果では、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)の値が平均値内に入っているため「問題なし」と判断され、まさか自分が鉄不足であると思ってもおられない方がほとんどなのです。

鉄が不足すると、以下のような様々な症状が現れることがあります。

鉄欠乏性貧血

  • 体内の鉄分が不足することで、赤血球中のヘモグロビン(酸素を運搬するタンパク質)が十分に作られなくなり、全身の組織への酸素供給が滞る状態になります。
  • めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、倦怠感、顔色不良、頭痛、爪の変形、氷を無性に食べたくなる氷食症、集中力低下、食欲不振などが起こります。

筋肉への影響

  • ミオグロビンは、筋肉内に酸素を貯蔵して、運動時に酸素を供給しています。
  • その構造の中心には、鉄を含む「ヘム」と呼ばれる部分があり、このヘムが酸素と結合することで、酸素の貯蔵と供給が可能になります。
  • ミオグロビンが減ってくると筋肉の働き低下・筋肉疲労・運動能力の低下・筋肉の痛み・筋肉の炎症などが起こります。

エネルギー代謝の低下

  • エネルギー生産工場と言われる、細胞内のミトコンドリアを元気にするために鉄が必要です。
  • これらのことから鉄不足になると、エネルギー生成の過程である「電子伝達系」、クエン酸回路などがうまく回らずエネルギーが十分作られず、またDNAの修復作業も行われにくくなるため、疲労感・倦怠感などが起こります。

細胞増殖の抑制

  • 鉄はDNA合成、細胞分裂、エネルギー産生など、細胞増殖に不可欠なプロセスに深く関与しているため、鉄が不足すると粘膜、皮膚、爪、髪の毛、免疫細胞、筋肉、精子など、全身の新陳代謝の低下などが起こります。

神経伝達物質の合成阻害

  • 鉄は、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の合成に関わる酵素の補因子として機能します。
  • また、神経終末からの神経伝達物質の放出に関与や神経伝達物質受容体の機能にも影響を与えています。
  • したがって鉄が不足するとドーパミン、セロトニンなどの脳内神経伝達物質が作られにくくなったり、末梢神経からの神経伝達物質の受け渡しがきちんとできなくなるため、疲労感、倦怠感 、意欲、集中力低下、記憶力低下、 抑うつ、不安 イライラ、怒りっぽさ、などのような気分の調整、 ADHD症状の悪化、睡眠などに影響します。

脳の機能低下

  • 上記のようなことににプラスして神経信号の伝達速度を高める役割のミエリン鞘の形成にも鉄は必要です。
  • 鉄が不足すると、脳神経細胞の成長発達、シナプス機能に影響したり、記憶学習に関わる海馬などに影響が出やすくなります。

脳への酸素供給減少

  • 脳は、体重に占める割合はわずか2%程度ですが、全身の酸素消費量の約20%を消費する、大変、酸素の消費量が大変多い臓器です。これは、脳が常に活発に活動しており、神経細胞が大量のエネルギーを必要とするためです。
  • 脳は、酸素不足に非常に弱い臓器です。 酸素供給が数分間途絶えると、脳細胞は不可逆的な損傷を受け始めます。
  • 鉄が不足すると脳への酸素供給量が減り、イライラ・抑うつ・集中力低下・記憶力低下など起こりやすくなります。
  • 酷くなると意識障害、運動障害、認知機能障害など、さまざまな神経学的症状を引き起こす可能性があります。

骨への影響

  • 骨芽細胞は、骨組織を形成する細胞です。
  • 鉄は、骨芽細胞の分化や活性に必要な酵素の補因子として機能します。
  • 鉄が不足すると、骨芽細胞の活動低下により、骨が作られにくくなり、 骨密度の低下しやすくなります。
  • また鉄は、コラーゲン合成に必要な酵素(プロリルヒドロキシラーゼ、リシルヒドロキシラーゼ)の補因子として機能します。 これらの酵素は、コラーゲン分子の安定化や架橋形成に重要な役割を果たします。
  • 鉄が不足すると、骨の柔軟性に必要なコラーゲンの生成が不十分になり、 骨折しやすくなります。
  • ビタミンDは、体内で活性型ビタミンDに変換されることで、その機能を発揮します。 この変換過程には、鉄を含むシトクロムP450という酵素が関与しており、鉄が不足するとビタミンDの活性化が阻害される可能性があります。
  • ビタミンDの合成が低下すると、カルシウムの吸収が不足すると骨が弱くなります。

このような事から、骨粗鬆症・圧迫骨折・疲労骨折など起こりやすくなります。また、成長期のお子さんや、閉経後の女性は注意が必要になります。

抗酸化力の低下

  • 鉄は抗酸化酵素の構成要素でもあります。例えばカタラーゼは過酸化水素を分解する酵素であり、鉄を必要とします。これらの酵素は、活性酸素を無害化し、細胞を酸化ストレスから守る役割を果たします。 鉄が不足すると、体が酸化しやすくなり、老化が早まります。

甲状腺機能の低下

  • 鉄は、甲状腺ホルモンの合成に必要な酵素である甲状腺ペルオキシダーゼの補因子として機能します。
  • 即ち鉄が不足すると、甲状腺ホルモンの合成が阻害され、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。
  • さらには鉄が不足すると、甲状腺ホルモンの代謝が低下し、甲状腺機能低下症の症状が悪化する可能性があります。
  • また、甲状腺ホルモンは、胃酸の分泌を促進し、鉄の吸収を助ける役割も果たします。
  • 甲状腺機能が低下すると、胃酸の分泌が減少し、鉄の吸収が阻害されます。
  • そのため甲状腺機能低下症は、鉄の利用効率を低下させる可能性があります。
  • さらには甲状腺ホルモンは、赤血球の産生を促進する役割を果たします。甲状腺機能が低下すると、赤血球の産生が減少し、鉄の利用効率が低下します。
  • 新陳代謝の低下、寒がりなどの症状があれば一度甲状腺機能の検査を受けられることをおすすめします。
  • このように甲状腺機能と鉄は、密接に関連しており、どちらの状態も適切に管理することが健康維持に重要です。

以上のように鉄が不足すると、ただ単に貧血だけでなく筋肉や脳、骨、全身の細胞の代謝などなど全身に問題が出てしまいます。

とりわけ妊娠中のお母さんは胎児に鉄分を供給するため、鉄分がたくさん必要です。貧血のお母さんから生まれた子供も鉄欠乏性貧血である場合が多く、上記のような様々なトラブルが起こりやすいと言われています。

出産前後、授乳中の方は特に充分量の鉄を補給する必要があります。

以下のブログでは鉄不足の対処法なども含め詳しくまとめていますので、ぜひこちらをご覧ください。

【現代人必見!】鉄不足の症状と対策!貧血だけじゃない、鉄の重要性

「貧血は女性のもの」と思っていませんか? 実は、鉄分は現代人にとって、男女問わず、年齢に関係なく不足しがちな成分なんです。 本日は鉄不足が引き起こす悪影響とその…

根本から治していくために

こきあ相談薬店ではお越しいただいた際に、お客様の生活スタイルや食事の摂り方などを詳しくお聞きし、それぞれお一人お一人に適した漢方薬、漢方食品、サプリメントなどをご提案すると同時に、その方に合った生活や食事の養生法をお伝えしています。

体調というものは一度正のスパイラルに入ると、どんどん良くなっていくものです。今現在、負のスパイラルに陥っているものを、正のスパイラルにもっていくことをサポートするのが我々がおすすめする物とアドバイスである思っていただければよいです。

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このブログはこきあ相談薬店の薬剤師 芳田がお届けしました。最後までお読みいただきましてありがとうございました。