
「コレステロールが高いと体に悪い」──多くの方がそう思っているのではないでしょうか。
健康診断の結果を見て、LDLコレステロールの数値に一喜一憂したり、コレステロールが多いと言われる食品を避けている方もおられるかもしれません。
確かに、過剰なLDLコレステロールが血管壁に沈着し、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気を引き起こすリスクを高めることは、よく知られている事実です。このため、一般的には「コレステロール値を下げましょう」「コレステロールが高い食品の食べ過ぎに注意しましょう。」と呼びかけられています。
しかし、このLDLコレステロールというものは、本当に「悪者」一辺倒なのでしょうか?
実は、驚くべきことに、コレステロール値が低すぎると、かえってがんや心臓血管疾患、脳卒中、さらには自殺、自傷行為、暴力、不妊、感染症など、あらゆる原因での死亡率が高まるという説もあります。
これが示唆するのは、コレステロールが単なる「悪玉」ではなく、私たちの体の機能維持に不可欠な存在である、ということに他なりません。
このように、コレステロールには善と悪の両面があるのです。次の章からは、世間で語られることの少ない、コレステロールの「役割」を多角的に掘り下げていきたいと思います。
目次
コレステロールは人間の体内に存在する「脂質」の一種
コレステロールは、人間の体内に存在する「脂質」の一種です。水に溶けない性質を持っているため、そのままでは血液(主成分は水)に溶けて全身を巡ることができません。そこで、タンパク質と結合して「リポタンパク質」という形になり、血液中に運ばれます。
特に、健康診断などでよく耳にする「LDLコレステロール」と「HDLコレステロール」は、このリポタンパク質の一種で、それぞれ異なる役割を持っています。
- LDLコレステロール:
- 肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞や組織に運ぶ「運送トラック」のような役割を担っています。
- LDLコレステロールが「悪玉」と呼ばれるのは、増えすぎると血管壁にコレステロールがたまり、動脈硬化を進めてしまうためです。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高めます。ただし、LDLコレステロール自体が悪影響を及ぼすわけではなく、その「過剰な状態」が問題となります。
- HDLコレステロール:
- 血管壁などにたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す役割を担っています。いわば「清掃トラック」のような役割です。肝臓に戻されたコレステロールは、処理されたり、再利用されたりします。
- HDLコレステロールが「善玉」と呼ばれるのは、血管からコレステロールを取り除くことで、動脈硬化の進行を抑える働きがあるためです。
つまり、LDLコレステロールはコレステロールを「供給」する役割、HDLコレステロールはコレステロールを「回収」する役割を担っており、両者がバランスよく存在することが血管の健康にとって重要です。
LDLコレステロールとHDLコレステロールの構造の違い
LDLコレステロールとHDLコレステロールは、どちらも血液中でコレステロールを運ぶ「リポタンパク質」という粒子ですが、その構造と役割には明確な違いがあります。簡単にまとめると以下のようになります。
特徴 | LDLコレステロール(悪玉) | HDLコレステロール(善玉) |
---|---|---|
大きさ | 比較的大きい(直径約20nm) | 比較的小さい(直径約10nm) |
密度 | 低い(タンパク質の割合が低い) | 高い(タンパク質の割合が高い) |
コア | コレステロールエステルが多い | コレステロールエステルが多いが、回収したものを運ぶ |
主なアポリポタンパク質 | ApoB-100(1分子のみ) | ApoA-I(複数存在、HDLの構造維持とコレステロール回収に重要) |
役割 | 肝臓から全身の細胞へコレステロールを運ぶ(運送トラック) | 全身の余分なコレステロールを肝臓へ回収する(清掃トラック) |
具体的な違い
- 「コレステロールの積載量」と「タンパク質の割合」
- LDLは、内部にコレステロールエステルを多く積んでいます。そのため、粒子全体に占めるタンパク質の割合が比較的低く、密度が低いのが特徴です。例えるなら、コレステロールをたくさん積んだ「大型運送トラック」のようなイメージです。
- HDLは、タンパク質の割合がLDLよりも多く、密度が高いのが特徴です。コレステロールの量はLDLより少ない傾向にあります。これは、余分なコレステロールを回収する役割を果たす上で、タンパク質の働きが非常に重要だからです。例えるなら、機動性に優れた「小型清掃トラック」のようなイメージです。
- 「アポリポタンパク質」の種類
- LDLの表面にはApoB-100というアポリポタンパク質が1分子だけ存在し、これが細胞がLDLを認識してコレステロールを取り込む際の「鍵」の役割をします。
- HDLの表面にはApoA-Iというアポリポタンパク質が主として存在し、これがコレステロールを細胞から引き抜いたり、HDLが成熟する過程で重要な働きをします。
このように、LDLとHDLは、同じコレステロールを運ぶという共通点がありながらも、その構造的な違いが、それぞれが体内で果たす異なる役割に繋がっています。
コレステロールの主な生成源:
体内で合成されるもの(約70~80%): 肝臓を中心に、体内で糖質や脂質を材料として合成されます。
食事から摂取されるもの(約20~30%): 肉類、卵、乳製品など、動物性食品に多く含まれています。
「善玉」と「悪玉」だけでは語り尽くせないコレステロールの奥深さ
私たちはコレステロールを、「善玉コレステロール(HDLコレステロール)」と「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)」という言葉で認識しています。この表現がコレステロールのイメージを大きく左右してしまい、コレステロールの本来の複雑な役割を単純化し、時に誤解を生んでしまっていることは否定できません。
血液中のLDLコレステロールの基準値は、性別や年齢によって細かく設定されています。例えば、男性では72から178mg/dL、女性は30~44歳で61~152、45~64歳で73~183、65~80歳で84~190とされています。とされています。
これは日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が、健康な人のデータを基に算出した「基準範囲」で、健康な人の大多数が含まれる範囲を示しています。つまり、この範囲内であれば、直ちに治療が必要な「異常」とは判断されない、という考え方に基づいています。
特に女性の場合、50歳未満では男性よりもLDLコレステロール値が低い傾向にあるものの、50歳を超えると急上昇し、男性よりも高くなることが一般的です。
実際、50歳を過ぎた女性の約半数が、総コレステロール値が220mg/dLを超えるというデータもあります。これは、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量の変化が影響していると考えられています。
LDLコレステロールが高すぎるだけでなく、HDLコレステロールが低すぎたり、中性脂肪が高すぎたりするなど、血液中の脂質が異常な数値を示す状態は脂質異常症と呼ばれます。これは血液中の脂質のバランスが崩れていて、動脈硬化のリスクが高まっている状態全般を指します。かつては「高脂血症」と呼ばれていましたが、2007年4月に「脂質異常症」へと名称が変更されました。
ちなみに、日本動脈硬化学会の診断基準は LDLコレステロールは140mg/dL以上で「高LDLコレステロール血症」と診断されます。これは、動脈硬化性疾患のリスクが高いと判断される値ですが、興味深いのは、女性におけるLDLコレステロール値と動脈硬化の関連性です。多くの研究で、女性の場合、LDLコレステロール値が140mg/dLを超えても、頸動脈の肥厚(血管壁が厚くなること)傾向が見られず、動脈硬化があまり進行していないケースが多いことが報告されています。しかし、数値が180mg/dLを超えると、一部の人に血管壁の肥厚が見られるようになるという段階的な変化があります。
日本における女性の動脈硬化研究の第一人者である田中裕幸先生(日本医科大学特任教授)は、「頸動脈エコーのIMT値が1ミリを超えているかどうかが、女性の心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを知る指標として重要。」 そして、「LDL値180mg/dl以上で、女性(非高血圧)のIMT値が1.5ミリを超え始めるのは55歳以降。」「閉経後(55~69歳)の女性で、頸動脈エコーで1.1ミリ以上の動脈硬化のプラーク形成が見られるのは、LDLコレステロール値が180mg/dl以上の人だけ。閉経後ならこの数値が治療開始の目安となる。」と述べられています。
つまり、これらのことは、女性のコレステロール管理において、単にLDLコレステロールの数値だけで判断するのではなく、年齢、閉経の有無、他のリスク因子(高血圧、糖尿病、喫煙など)、そして頸動脈エコーなどの画像診断による血管の状態を総合的に評価することの重要性を示しています。
アメリカの治療指針では、喫煙や高血圧といった明確な動脈硬化の危険因子がない場合、LDLコレステロール値190mg/dL以上の人が治療の対象となる、とされています。
これは、コレステロール値だけで一概に「悪」と決めつけるのではなく、個人の状況や他のリスク因子を総合的に判断する必要があることを示唆しています。
コレステロールを下げる薬とコエンザイムQ10との知られざる関係
ある女性のお話です。この女性は60代の頃、かかりつけの病院で頸動脈エコー検査を受けた結果、コレステロールの軽度な蓄積と高血圧の傾向があると診断されました。医師の判断で、高血圧治療薬と、コレステロール値を下げるためのスタチン系の薬が処方されました。(当時の総コレステロール値は270mg/dL超、HDLコレステロール値は80mg/dL、LDLコレステロール値は150mg/dL。)
数年後、この女性のコレステロール値は大幅に改善しました。血圧も安定した状態が続いています。(総コレステロール値は190mg/dL、HDLコレステロール値は85mg/dLを維持し、LDLコレステロール値は70mg/dLまで低下)
数値だけを見れば、薬の効果は絶大で、とても良い結果と言えます。
しかし、今回の血液検査でCPK(CK)値が高くなっていました。CPKとは筋肉の傷つきや壊れを示す数値です。この結果を受けスタチン系の薬が中止になりました。
この女性に使われたスタチン系の薬は、脂質異常症の治療薬として広く使われるHMG-CoA還元酵素阻害薬の一種です。この薬は、肝臓でコレステロールを合成する際に必要なHMG-CoA還元酵素の働きを阻害することで、血液中のLDLコレステロールを低下させる効果があります。その作用機序は確立されており、多くの患者さんのコレステロール値を改善してきた実績があります。
しかし、このスタチン系の薬には、コエンザイムQ10(CoQ10)の生成量を減少させるという副作用が知られています。
コエンザイムQ10は、私たちの血液や体内の全ての細胞、特に細胞内の「エネルギー工場」と呼ばれるミトコンドリアに豊富に存在しています。ミトコンドリアは、細胞が活動するためのエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)を生成する重要な役割を担っており、人の生命活動に必要なエネルギーの約95%がここで作られています。コエンザイムQ10が体内に十分に存在すると、エネルギーの生成効率が約28倍も高まるとも言われています。
なぜスタチン系の薬はコエンザイムQ10の合成を阻害するのでしょうか?
それは、コエンザイムQ10の合成経路が、途中までコレステロールの合成過程と同じ経路をたどるためです。コレステロール合成を抑える薬が、結果的にコエンザイムQ10の合成まで阻害してしまうという、いわば「巻き添え」のような形で副作用が生じるのです。体内のエネルギー生産の95%を担うミトコンドリアの働きを支えるコエンザイムQ10が不足することは、体にとって大きなダメージとなりかねません。

コエンザイムQ10は、食事からの摂取と、体内で合成されるという二つのルートで得られます。しかし、体内でコエンザイムQ10を作り出す能力は、20代をピークに下がり始め、特に40代以降は急速に減少することが分かっています。この事実を考えると、スタチン系の薬を服用している40代以降の人は、食事やサプリメントから積極的にコエンザイムQ10を摂取することが、自身の健康を維持するために極めて重要であると言えるでしょう。
コエンザイムQ10不足が招く体の不調:意外な要因と症状
コエンザイムQ10の重要性について、さらに深掘りしてみます。千代田国際クリニックの故・永田勝太郎元院長は、コエンザイムQ10が不足する理由として、加齢以外に特に二つの重要な要因を挙げていました。
- ストレス: 現代社会はストレスに満ちています。ストレスは体内の活性酸素を増大させる主要な原因となります。活性酸素は細胞を傷つけることで知られていますが、コエンザイムQ10は強力な抗酸化物質として、この活性酸素から体を守る役割を担っています。しかし、ストレスが過度にかかると、ストレス解消のために大量のコエンザイムQ10が消費されてしまい、結果的に体内のコエンザイムQ10が不足してしまうのです。
- 病気: 私たちの体が病気と闘う際にも、コエンザイムQ10は大量に消費されます。病気の時には食欲も減退しがちで、食事からのコエンザイムQ10の摂取も難しくなります。さらに、病気によって生体機能が低下すると、体内でのコエンザイムQ10の合成能力も減退するという悪循環に陥ります。
このように、加齢だけでなく、ストレスや病気といった要因もコエンザイムQ10の不足を加速させるのです。
では、コエンザイムQ10が不足すると、私たちの体にはどのような変化が起こるのでしょうか?エネルギー生産効率が低下し、細胞機能が衰えることで、以下のような様々な症状が現れることがあります。
- 疲れやすさ、倦怠感: 細胞のエネルギー不足が直接的に影響し、全身の疲労感が慢性化します。
- 頭痛、腰痛、関節痛: 筋肉や関節の細胞機能が低下し、痛みを伴うことがあります。
- 目覚めの悪さ、体の冷え、下肢のむくみ: 代謝の低下や血行不良が原因となることがあります。
- 体中の痛み: 広範囲にわたる細胞機能の低下が、説明のつかない痛みを引き起こすことがあります。
さらに、コエンザイムQ10は強力な抗酸化作用を持つため、これが不足すると体全体の抗酸化力が弱まり、酸化ストレスに対する免疫力が低下します。その結果、
- 風邪をひきやすくなる
- 物忘れが多くなる
- 肌の衰えが加速する
といった症状にも悩まされることがあります。健康な体を維持し、若々しさを保つ上で、コエンザイムQ10が十分に体内に存在していることは極めて重要であり、その不足は私たちにとって大きなマイナスとなるのです。
LDLコレステロールは本当に「悪玉」なのか?再考!!
「悪玉」という言葉が浸透しているLDLコレステロールですが、その実態は本当に「悪」なのでしょうか?
LDLコレステロール値は、一般的に「卵や肉を控える」「運動をする」といった生活習慣の改善によって良くなるという印象が強いかもしれません。しかし、驚くべきことに、近年の研究では、LDLコレステロール値が生活習慣の影響を最も受けにくい、遺伝的要因が非常に強く関与する指標の一つであるとされています。もちろん、食生活や運動がまったく影響しないわけではありませんが、その影響度は私たちの想像以上に限定的である可能性が高いのです。
以下の表は少し専門的になりますので飛ばしていただいていいです。
要因 | LDL-C値への影響の質 | 影響の程度(概念的) | 相互作用の側面 |
---|---|---|---|
遺伝的要因 | |||
FH(単一遺伝子変異) | LDL-C値の著しい基礎的上昇、治療抵抗性、早期動脈硬化リスクの主要因 | 極めて大 | 生活習慣介入の効果が限定的になる主要因 |
多因子性(ポリジェニック) | 複数の遺伝子多型の累積によるLDL-C値の上昇、心血管疾患リスクへの寄与 | 中〜大 | 生活習慣の影響度を修飾(例:レスポンダー/ノンレスポンダー) |
遺伝率 | LDL-C値の変動の約40-52%を説明 | 大 | 個人のLDL-Cの基礎レベルを規定 |
生活習慣要因 | |||
食事(飽和脂肪酸、糖質など) | LDL-C上昇、コレステロール摂取による影響(個人差大) | 中〜小 | 遺伝子型(例: APOE多型)が食事反応性を修飾 |
運動 | HDL-C増加、LDL-C減少効果 | 中〜小 | 全身持久力により遺伝的リスクを抑制する可能性 |
喫煙・飲酒 | LDL酸化促進、動脈硬化進行、中性脂肪増加 | 中〜小 | 遺伝的リスクの発現を増悪させる因子 |
つまり、近年の研究では、LDLコレステロール値が遺伝的要因に非常に強く規定される指標であることを明確に示しています。
特に、LDL受容体遺伝子などの単一遺伝子変異によって引き起こされる家族性高コレステロール血症(FH)は、その典型例であり、LDL-Cの代謝経路における遺伝子の決定的な役割を浮き彫りにしています。さらに、多数の遺伝子多型が累積的に作用する多因子性高コレステロール血症の概念や、LDL-Cの高い遺伝率(約52%)が、この遺伝的優位性を統計的にも裏付けています。
一方で、食生活、運動、喫煙といった生活習慣はLDL-C値に影響を与えるものの、その影響度は個人の遺伝的背景によって大きく異なり、普遍的に劇的な効果を期待できるわけではない点で「限定的」であると言えます。
特定の遺伝子型を持つ個人では、生活習慣介入への反応性が異なる「レスポンダー」と「ノンレスポンダー」が存在し、生活習慣が遺伝的リスクの発現を修飾する側面(増悪または緩和)も持ちます。特に、FH患者においては、生活習慣の改善のみでは目標LDL-C値に到達することは困難であり、薬物療法が不可欠であることが臨床ガイドラインからも示されています。
したがって、LDLコレステロールの適切な管理には、遺伝的素因と生活習慣の複雑な相互作用を深く理解し、画一的なアプローチではなく、個人の遺伝的背景に基づいた個別化されたリスク評価と予防・治療戦略が不可欠となるわけです。
コレステロールの3つの重要な役割
全ての細胞膜の主要な材料
私たちの体には約37兆個もの細胞が存在すると言われています。そして、コレステロールはその全ての細胞膜の主要な材料となっています。細胞膜は、細胞の形を保ち、内外の物質の出入りを調整する重要なバリアです。
この細胞膜が正常に機能するためには、一定量のコレステロールが常に確保されている必要があります。つまり、LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」というレッテルを貼られているものの、実際には細胞や組織の構造を安定化させるために必須の物質なのです。
様々なホルモンの原料
LDLコレステロールの役割はそれだけではありません。体内で非常に重要な様々なホルモンの生成・分泌にも深く関わっています。例えば、
- DHEA(デヒドロエピアンドロステロン): 副腎で作られるステロイドホルモンの前駆体で、「老化防止ホルモン」とも呼ばれ、長寿との関連が示唆されています。
- ステロイドホルモン: 免疫機能の調整や炎症の制御に不可欠です。
- テストステロン: 男性ホルモンの一種で、認知機能や骨代謝に影響を与えます。
これらのホルモンは、私たちの健康な生活を送る上で欠かせないものです。LDLコレステロールがこれらのホルモンの原料となることを考えると、「悪玉」と決めつけてその値をいたずらに下げることは、はたして身体にとっては本当に必要なことなのでしょうか・・・。と思ってしまいます。
胆汁の原料
さらに、LDLコレステロールは、脂溶性ビタミンの吸収や、体内の毒素や老廃物を排出する上で重要な胆汁の原料でもあります。
ビタミンDの原料
近年、新型コロナウイルスの流行でその重要性が再認識されたビタミンDも、LDLコレステロールから体内で合成されます。つまり、「悪玉コレステロール」と呼ばれるLDLコレステロールを過剰に減らすことで、ビタミンDの生成が阻害され、結果的に感染症にかかりやすくなってしまう可能性も考えられるのです。
ビタミンDは、体内に侵入したウイルスや細菌に対して、必要な免疫機能を促進したり、過剰な炎症反応を抑えたりと、免疫機能を調整する重要な役割を担っていることがわかっています。
このように、LDLコレステロールは、私たちの生命活動を維持するために多岐にわたる重要な役割を担っています。「善玉」や「悪玉」という言葉の印象が先行してしまっていますが、LDLコレステロールが悪そのものであるわけではありません。
動脈硬化のリスクが高まるのは、酸化ストレスを強く受けたLDLコレステロールが多すぎる場合です。もし、喫煙習慣がなく、高血圧や糖尿病などの他のリスク因子もなく、頸動脈エコーなどで動脈硬化の進行が見られないのであれば、無理にコレステロールを下げる必要はないのかもしれません。大切なのは、コレステロールの数値だけにとらわれず、自身の健康状態や他のリスク因子を総合的に判断し、必要であれば専門医とよく相談することです。
動脈硬化性疾患のリスクを評価するために注目されているのは比率
LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の「比率」は、それぞれの単独の数値だけでなく、これらを組み合わせることで、より詳細な動脈硬化性疾患のリスクを評価するために注目されています。特に重要な比率は以下の2つです。
1. LH比(LDL-C/HDL-C比)
- 計算方法: LDLコレステロール値 ÷ HDLコレステロール値
- 意義: 「悪玉」であるLDLコレステロールと、「善玉」であるHDLコレステロールのバランスを示します。この比率が高いほど、血管壁にコレステロールが蓄積しやすい状態にあると判断され、動脈硬化のリスクが高いと考えられます。
- たとえLDLコレステロール値が基準範囲内であっても、HDLコレステロール値が低い場合、LH比が高くなり、動脈硬化のリスクが高まることがあります。
- 目安:
- 1.5未満: 血管内は健康な状態
- 1.5以上: コレステロールが血管内に付着し始めている可能性
- 2.0以上: 血管内壁全体にコレステロールの塊がこびりついている可能性
- 2.5以上: 動脈硬化や血栓のリスクが非常に高い状態
- ※高血圧や糖尿病がある場合、あるいは心筋梗塞などの病歴がある場合には、より低いLH比(1.5以下)が目標とされることがあります。
2. TG/HDL-C比(中性脂肪/HDLコレステロール比)
- 計算方法: 中性脂肪値 ÷ HDLコレステロール値
- 意義: この比率は、動脈硬化をより強く促進するとされる「小型HDLコレステロール(sdLDL)」の量や、インスリン抵抗性(2型糖尿病の前段階の状態)の指標として注目されています。
- 中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低い場合にこの比率が高くなります。
- TG/HDL-C比が高いと、動脈硬化性疾患(特に冠動脈疾患)や、2型糖尿病の発症リスクが高いことが多くの研究で示されています。
- 目安:
- 2.0未満: リスクは低いと考えられます。
- 3.0〜4.0以上: 小型LDLが多く、心血管疾患のリスクが高いとされています。
3. Non-HDLコレステロール
比率ではありませんが、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪と関連する重要な指標として、「Non-HDLコレステロール」があります。
- 計算方法: 総コレステロール値 - HDLコレステロール値
- 意義: LDLコレステロールだけでなく、レムナントコレステロール(中性脂肪を多く含むリポタンパクの残りカス)など、動脈硬化を引き起こすすべての悪玉コレステロールの総量を反映する指標です。
- 特に中性脂肪が高い場合や、食後の採血の場合でも信頼性の高い指標として用いられます。
- LDLコレステロールの目標値を達成しても動脈硬化のリスクが残る場合に、Non-HDLコレステロールの管理が重要視されます。
- 目安(目標値): LDLコレステロールの目標値よりも30mg/dL程度高く設定されることが一般的です。
なぜ比率が重要なのか?
それぞれの脂質の値が個別に基準範囲内であっても、これらの比率が高くなることがあります。これは、単独の数値だけでは見落とされがちな、動脈硬化の進行リスクをより正確に評価するために役立ちます。
例えば、LDLコレステロールが正常範囲内でも、HDLコレステロールが低ければLH比は高くなり、実際には動脈硬化のリスクが高い可能性があります。また、中性脂肪が高いと小型LDLコレステロールが増加し、さらにHDLコレステロールが低下する傾向があるため、TG/HDL-C比はより多角的にリスクを評価する指標となります。
これらの比率やNon-HDLコレステロールは、特にメタボリックシンドロームや糖尿病の患者さん、あるいは心血管疾患の家族歴がある方など、リスクが高い方々において、よりきめ細やかな脂質管理と動脈硬化予防のための重要な指標として活用されています。自身の健康診断の結果と合わせて、これらの比率も確認し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。
コレステロールとの賢い付き合い方:未来の健康のために
これまでの話をまとめると、コレステロールは単なる「悪者」ではなく、私たちの体が正常に機能するために不可欠な存在であるということが見えてきます。特にLDLコレステロールは、細胞の構造を維持し、様々なホルモンの原料となり、ビタミンDの生成にも関わるなど、多岐にわたる重要な役割を担っています。
一方で、過剰なLDLコレステロール、特に酸化されたLDLコレステロールが動脈硬化のリスクを高める真の悪玉コレステロールであることを理解することも大切です。
問題は「コレステロールそのもの」ではなく、前述してきたように「コレステロールの質」や「体の酸化ストレス」といった要因にあるように思えます。
私たちは、コレステロールの数値に一喜一憂するだけでなく、その裏にある体のメカニズムを理解し、より賢く健康と向き合うことが求められています。
- 総合的な視点を持つ: コレステロール値だけでなく、血圧、血糖値、喫煙の有無、運動習慣、ストレスレベル、そして家族歴など、様々な要因を総合的に評価することが大切です。
- コエンザイムQ10の重要性を認識する: スタチン系薬剤を服用している方はもちろん、加齢やストレス、病気を抱えている方も、コエンザイムQ10の積極的な摂取を検討する価値があるでしょう。これは、エネルギー生産の効率を高め、体全体の機能維持に貢献します。
- 体の酸化リスク:新の悪玉コレステロールを作り出してしまう、体の酸化リスクもよく理解し、できるだけ活性酸素を作らないような生活、抗酸化物質の摂取などを積極的に行い、対応していくことも重要です。
- 過度な制限の見直し: 「コレステロールが高いから」と、卵や肉などの食品を極端に避けることが、かえって体のバランスを崩す可能性も考えられます。バランスの取れた食事を心がけ、必要以上に食生活を制限しないことも重要です。
- 専門家との対話: もし自身のコレステロール値や健康状態について疑問や不安がある場合は、自己判断せず、必ず専門家に相談してください。
健康は、一つの数値だけで語れるものではありません。コレステロールという重要な要素についても、より深く理解することで、ご自身の健康に対する向き合い方が変わるかもしれません。
コレステロールを単に「悪者」と決めつけるのではなく、体にとっての「不可欠な存在」として捉え、賢く付き合っていくことが最も大切なことだと私は思います。
根本から治していくために
こきあ相談薬店ではお越しいただいた際に、お客様の生活スタイルや食事の摂り方などを詳しくお聞きし、それぞれお一人お一人に適した漢方薬、漢方食品、サプリメントなどをご提案すると同時に、その方に合った生活や食事の養生法をお伝えしています。
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